放牧地が広がる山のふもとに立つ、老いた一本桜。熊本県南阿蘇村の「観音桜」は、もとは名もなき「ただの桜」だった。
背後に雄大な阿蘇山を望むロケーションのよさが口コミで評判になり、近くにある馬頭観音にちなんで地元住民が名前をつけた。2010年から本格的に保全活動をはじめた。
樹木医にみてもらい、風で揺れても枝が折れないように支柱を何本もたてた。新しい桜の名所になり、多くの見物客が訪れた。ただ、樹齢70~100年とされる老木だけに、高い所の枝が枯れるなど衰えも目についた。協力金を200円ずつもらって保全の資金にした。
「こんなに弱った桜を見せて、お金をとるなんて」
18年春、桜を管理する住民グループの代表だった今村久也さん(64)は、見物を終えた男性から文句を言われて驚いた。福岡市東区で造園業を営む石谷統冶さん(82)だった。しばらくして電話がかかってきた。「このままではあと何年ももたない」と、独自に開発したという「樹木の再活性化法」を勧められた。
枝から根、一石二鳥の工法 「なんで?」
その方法は「枝の途中から根…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル